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2009年08月03日

ゆるいラーメン屋台

四条某所で営業しているラーメン屋台がある。

ゆるいラーメン屋台
火曜日から土曜日の深夜零時半頃に、白い軽トラがふらっとそこにやって来る。本当にふらっと。そして大将は駐車スペースを見つけていつの間にかそこにおさまると、車からおりて黙々と提灯とテーブルと椅子を出して商売の準備を整える。

名前はない。営業時間も実は決まっていない。商売っ気もあまりない。大将は夏と冬はひたすら長い休みを取る。どんなに遅く来ても、仕事をするのは4時まで。なるべく早くおうちに帰りたいらしい。

ある時、忘れられない会話を交わした。
立ち飲み居酒屋で一杯ひっかけて帰る途中、ラーメンが食べたくなった僕は、大将の携帯に電話をした。時刻は2時過ぎ。いつもなら余裕で営業している時間だった。

「はいっ、ラーメン屋です」

いつもこんな調子で出る。屋号がないのでラーメン屋と名乗るのだ。

「あ、すみません。今から行きたいんですけど、今日は何時まで?」

以前聞いた時は、一応の営業時間は朝の4時までだと言っていた。
しかし――。

「あぁ~、あのですね、今日はお客さんがあまりおらんもんですから、もう片付けて帰る所でした」

「そうなんですか?残念だなぁ」

「あのぉ、何でしたら待ってましょうか?」

一瞬、いい所あるじゃないって思った。

「ホントですか。ああ、でも、ご面倒でしたらいいですよ」

こういうのは、日本語の礼儀として言っておくものである。

「ああ・・・そうですか・・・。・・・・・・。ええと、じゃあ今日は閉めますわ」

え?
メンドーなの?

いや、でも「らしい」。らし過ぎるぞ大将。
フラれてしまった僕は、少し落ち込みながら三条のみよしに行った。嘘が人を傷つけることはよく知られているが、正直さもまた、人を傷つける時があることを知った夜だった。

大将はそんなカンジだ。一言でいえば、ゆるいキャラなのだ。
無愛想ではないが、表情豊かなタイプでもない。普通に客の話に合わせて相槌を打ち、普通に笑って、普通に気温の話をする。彼は寒いのがニガテだ。


ゆるいラーメン屋台
一人でゆっくり作るので、あまり大勢で来られると実は困っているのが分かる。表情はあまり変わらないが、常連の目には明らかだ。彼が一杯のラーメンを作る時間は、そんなに早くない(でも最近は前より少し早くなった)。もう4~5年ほどやっているので、もう少し頑張ってほしいと思う反面、「いや、それでこそ大将だ。いつまでもそのままでいてくれ」とエールなんぞを送っている自分がいる。まったくフクザツな気分にしてくれる人だ。そんな屋台に、僕は大将のキャリアとほぼ同じ時間通い続けている。



ラーメンにはチャーシュー、ネギ、もやし、メンマ、そしてナルトが入っている。古き良き中華そばといった趣で、味はあっさりしている。不思議な味だ。以前スープに使っているものを聞いたら、野菜、昆布、豚骨、鶏ガラなど、色々なものを使っていると言っていた。僕は常連なのに、今だにこのラーメンを「~ラーメン」と一言で表せないでいる。豚骨ラーメンならもっと豚骨ラーメンらしく、鶏ガラ醤油ならもっと鶏ガラ醤油らしくすればいいのにって思う。

昔は一杯500円だった。ワンコインで食べることができたのだ。ところが今は600円である。チャーシューメンは700円から800円に値上げした。けど昔から、大盛りにしても料金は変わらないところが嬉しい。




ゆるいラーメン屋台僕はいつもチャーシューメンを食べている。「うりゃっ、これでもか」と主張するくらいにドンブリを覆う豚ちゃんたちを見て、客は喜んだり嘆いたりする。

「ええなぁ、大将。これくらいやらんとな」とか「あかんわオッチャン、これ多すぎるわ。もっと少のうせい」とか、色んな反応がある。はっきり言って後者のコメントには迷惑している。胃袋に自信がなけりゃ、普通のラーメンを頼めばいいのに。

でもそんな客が多かったのだろう。ある日、大将がこんなことを言い出した。

「チャーシュー、薄くしようと思うんです・・・お客さんから言われて・・・」

じゃあ、僕はどうなるんだ?って思った。僕は薄くしろだなんて思っていない。むしろもっと分厚くても大歓迎だ。たまにしか来ない上に自分の胃のキャパをしらない客か、昔からひいきにしている常連の僕か、どっちを取るんだ?と詰め寄りたかった。生まれて初めてそんな気持になった。

そんな僕の心中を察してか、「あの・・・薄い分多めに入れとくんで」と大将は言った。出て来たラーメンを見て僕は感動した。控えめに言って、豪華だった。デラックス・チャーシューメンと名づけた。薄いチャーシューは食べやすくて、おいしかった。<おいしい厚さ>は確かに存在するらしい。




でも、いつの間にかチャーシューは元の枚数になった。
薄くしたまま。
やってくれるじゃねえか大将・・・って思った。ゆるいキャラなのに、意外としたたかだ。

でも憎めない人である。それなりに気も遣ってサービスしてくれるし、おいしいものを作ってくれる。何よりもここのラーメンは、僕にとって京都の思い出の味なのだ。




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Posted by Tamo at 23:20│Comments(0)ラーメン
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