京つう

日記/くらし/一般  |京都府南部

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Posted by 京つう運営事務局 at

2009年08月08日

あじと



飲み日記の続きである。
しめのラーメンというのは魅力的な選択肢だった。久しぶりに三条のあじとに行くことにした。

のれんをくぐると、いつもの大将ではなく、違うお兄さんがいた。店員を雇ったのかなと思ったら、この人が新しい大将なのだという。「世間はめまぐるしく変化している」という大げさな言葉が、なぜか頭をよぎった。ビールを冷蔵庫から取ろうとしたら、「そっちじゃなくてこっちなんです」と違う冷蔵庫を指された。めまぐるしい変化・・・。

ここでうっかり瓶ビールを飲んでしまったので、ひどい二日酔いになってしまったのだろう。どういうわけかあじとは飲みたくなるラーメン屋だ。






普通に食べてもおいしいラーメンだが、飲んだ後もうまいラーメンである。

あじとができて、飲んだ後の楽しみが三条に増えた。ここは以前ラーメン・トップという店だった。2回ほど食べたことがある。あじとの先代ご主人がやっていた。名前を変えての営業というわけだが、いい店名だと思う。

「あじと寄らない?」
「ちょっとあじとに行ってくる」
「彼をあじとで見かけた」

何かいい響き。僕はこういうのが大好きだ。





酔った勢いで、あじとの新しい大将にお願いしてみた。

「ブログ書いてるんですけど、もしよかったら写真を撮らせてくれませんか?」

「いいですよ」と快諾してくれた。

「じゃあ、仕事をしている恰好を」と調子に乗って頼んでしまった。それがこの写真である。わざわざ鍋に向かってくれた。

変な客の変な頼みを聞いて下さり、ありがとうございました。


  


Posted by Tamo at 21:00Comments(0)ラーメン

2009年08月08日

男は飲んだ後、あじとに向かった

「ええ天気過ぎるやろ・・・」
部屋のドアを開けて思わず関西弁でつぶやいてしまった。この日光は二日酔いの体にこたえる。

昨日はひとつ大きな仕事が片付いて、久しぶりに外で飲んでいた。しかもハシゴ酒である。


一軒目は元田中にあるタコス屋のタケリア・パチャンガ。ここは平日の2時から6時まで、ビールが390円なのだ。この時間帯をハッピーアワーという。まことにハッピーなネーミングである。
僕のお気に入りはブラジル風ソーセージ。大きくて食べごたえがあり、とてもおいしい。

これをアテに、ライム入りコロナをちびちびと飲んだ。僕の大好きな時間である。パチャンガに行くといつもこのソーセージの大を注文する。4本で1000円。良心的だと思う。

そういえば、僕はこの店をずっと「ラテン酒場」と呼んでいた。ここに来る時はたいてい飲んで帰るからだが、正確にはタコス屋さんなのである。タコライスもおいしい。



二軒目は四条大宮にある立ち飲み居酒屋てらに行った。僕はこの店が大好きでよく利用している。安くてうまい、素晴らしい居酒屋である。

毎週行っていたのだが、ここ最近忙しくて、実に3週間ぶりだった。ご主人のてらさんが「お久しぶりですね」と言ってくれた。

てらさんはパパイヤ鈴木に似ている。髪型はもじゃもじゃではないけど。

僕はテレビを持っていないので、ニュースとかはこの店で見ている。酒井法子がいつの間にか容疑者になっていた。2009年は大きな出来事が立て続けに起きている。GMの経営破綻、KJ法の考案者である川喜田二郎先生の死、そして容疑者・酒井法子・・・。まだ30代だったとは。意外と若いんだなと思った。


3軒目は五条にあるシェリーバーKAOに行った。ここで飲むのは久々である。KAOは日によって店の人が違う。僕は日曜の客だったので金曜はどんな人がやっているのかとちょっとビビりながら店のドアを開けた。

いつも飲んでいるドン・ホセとコントラバディスタを注文した。二杯目にさしかかって急に眠くなり、ウトウトしながらシェリーを飲んだ。KAOの椅子は座り心地がいいのか、たまに寝てしまう。お店の人(カメラマンなのだそうだ)に寝ながら飲む姿を笑われてしまった。お恥ずかしい。

KAOでは下向きTHEダイヤモンドというフリーペーパーを読むのが楽しみのひとつだった。しかし、なんと休刊するのだという。ショックである。2009年は色々な出来事が起きている。オバマ大統領の誕生、容疑者・酒井法子、そして下向きTHEダイヤモンドの休刊・・・。早く復活してほしい。

  


Posted by Tamo at 20:01Comments(0)酒と肴

2009年08月07日

グリルデミの裏メニュー

グリルデミは夷川通りにある洋食屋である。地下鉄丸太町駅の6番出口から歩いてすぐに行ける。

同店はハンバーグとデミグラスソースが人気のメニュー・・・と世間では通っているらしいが、それはあくまでも表向きの話。裏では他にも色々なメニューを手広く提供している。

例えば試しに「秀吉定食」と注文してみると、ひょうたん型のけったいな重箱が「へい、おまち」の掛け声とともに出てくる。



ひょうたんはその昔、豊臣秀吉の馬印だった。
しかし、よくこんな形の重箱を見つけたな・・・。
中身は秘密である。

マスターの井本順久氏には<いもいも>とか、<よりさん>とか、<ヨリエモン>とか、とにかく色々なアダ名があって、どう呼ばれても「はいよ」とええ感じの返事をする。そんな彼は自称、<織田信長研究家>だ。今はどうか知らないけど、少なくとも昔は名刺の肩書にそう書いてあった。

にも関わらず、近頃は秀吉に浮気している。
ってことだろう?この明らかな物証は・・・。




それはさて置き、ハンバーグとデミグラスソースをうりにしているこの店は、実は以前とびっきりうまいカレーライスも出していた。あまりにもおいしくて、僕は1日に2回も食べたことがあるほどだ。昼と夜の2連チャンである。

そんな風にひいきにしていたメニューなのに、ある日カレーはグリルデミのメニューからひっそりと消え去った。僕はヨリエモンに問うた。

「ねえ、カレーは?」
すると彼は「リストラした」と言った。
「何でそんなことすんだよー」
すると彼は「手間かけた割に、全然出ないんだもん」と言った。
「僕はしょっちゅう食べてるよ?」
すると彼は「うん。君と、もう一人だけ京都大学の院生が注文してくれてたんだけど、2人だけしか食べてくれないもんだからさ・・・。あれ仕込みに4時間もかかるんだよ」
「もうスタメンには戻らないの?」
すると彼は「もう戻らない」とボソッと言った。

かなり落ち込んだ。あんなにおいしいカレーをかくも簡単にリストラするなんて・・・。
「簡単にはリストラしてないよ。やつには3年間チャンスを与えたんだ。なのに結果を出さなかったから、仕方ないべ」

そんな大人の話なんか聞きたくない。
いや、自分もいい大人だけど、それでも聞きたくない。
僕はあがいた。

「ねえ、数日前から注文して500円多めに払ったら食べさせてくれる?」
「え、そこまでして食べたいの?なら似たようなやつ作ってあげるよ」
「似たようなやつ?ニセカレーかよ」
「ニセっていうか・・・カレーもどき。近い味は出せるよ」

そんな会話をしてだいたい1週間が経過した。最初は「もどきかぁ」と思っていた僕だが、その存在が空想の中でどんどん大きくなるのを止めることができなくなり、ついに負けた。
僕はヨリエモンにメールをした。
「もどき、食わして」
するとすぐに「了解」って返事が来たので、僕はグリルデミに向かった。

閉店30分前に着いた。
「今日は忙しかったよ」とヨリエモンが言った。
忙しいのはいいことだ。

思ったよりすぐにカレーもどきが出てきた。

いや、もどきすごいよ。卵もオプションでついてきた。
一口食べる。
あ、おいしい。確かにコクは劣るかもしれないけど、すごくおいしい。
「それでも40分は煮込んでる」
もどきでも、それなりに手間がかかってるんだ。素晴らしい。

そこそこ量があったのに、味が良かったのであっという間に完食してしまった。表メニューもおいしいけど、裏メニューもおいしい。

裏メニューといえば、気になる話を聞いた。もう一人のカレーの客だった京都大学の院生がこの前やって来て、開店以来の常連である僕ですら聞いたこともない料理を食べて帰ったそうだ。


「何作ったの?」
「豚骨ラーメン風ハンバーグ」
なにそれ・・・?
「おいしそうに食べてた?」
「いや、ノーコメントだった」
「実験メニュー?」
「こら、人聞きの悪いことを言うんじゃありません」

でも、グリルデミはたまに実験的メニューを試作しては、モニター(?)に食べさせて反応をリサーチしているのである。僕も以前、同店の<ホルモン・ハンバーグ>という、おそらくハンバーグ史上最強の歯ごたえを誇る一品を賞味した経験がある。これはたった一度だけしか客に出されなかった幻のメニューだ。

「やっぱホルモンは素人が手を出したらダメなんだよ」とヨリエモンはしみじみ言った。

そんな料理人の反省よりも、僕は豚骨ラーメン風ハンバーグが気になってしょうがなかった。いつか作ってもらおう。





  


Posted by Tamo at 02:00Comments(0)グルメ

2009年08月05日

いもねぎ(その2)

わびすけという定食屋は、烏丸今出川にある。道路を挟んだ向かい側には同志社大学があり、学生や教職員もよく利用する店だ。

世間の昼飯時から少し遅れた午後2時に、僕とカクさんは本物のいもねぎを確認しに行った。
「久しぶりだなぁ。お、相変わらず金魚がいるよ」
店の中央にある鉢を見ながらカクさんがはしゃいだ。
いもねぎ定食を2人前注文する。

「ここのコーヒーって結構うまいんだよ」
「そうですよね。ホットなら飲んだことあります」
僕はいもねぎを食べるよりも、コーヒーを飲むためにわびすけを利用した回数の方が多い。

あまり待つことなく、定食が出てきた。



「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人とも沈黙した。
「やっぱ、お前が作ったのとだいぶ違うな」
「ええ、全然違いますね」
僕のはぐちゃぐちゃだった。本物はこんなに美しく作られていたのか。比較したらよく分かる。
(右の写真が我流のいもねぎ)

  
 

「肉って真ん中にあったんだ・・・」
そうしみじみ言われると、ほんのちょっとだが、自分が恥ずかしい失敗をしたような気持にさせられた。
「多分これフライパンひとつだけだと、うまくできないんですよ。うち、コンロ1個しかないんで・・・」
と変な言い訳が勝手に口から出た。いつかこんな風に作ってみたいものだ。

店の人が醤油とソースを持って来てくれた。
「昔ケチャップを出してくれたことがあったんだよな」
「そうなんですか?」
「うん。少しつけてみたら、えらいウェスタンな味がしてさ。いもねぎっていうよりも、何かファミレスのメニューを食ってる気分になった」

へえ、くらいしか言うことがなかった。
醤油とソースをそれぞれ使ってみて、いもねぎにかけるなら絶対醤油だと思った。別にケチャップをかけたいとは思わなかった。

「お前さ、ここのチューハイ飲んだことある?」
メニューを見ながらカクさんが聞いた。
「ありますよ。結構濃いめです」

そう言いながら、僕はあることを思い出していた。

前に、友達と一緒に昼から飲む計画を立てた。日曜日の12時に地下鉄今出川駅前で集合して、適当に店を選んで入り、酒一杯とアテ一品を頼んで、飲み終わったらまた次に行くというほろ酔いツアーだった。

当日、定休日なのになぜか営業していたわびすけに入り、僕はビールといもねぎを、友達はレモンチューハイといもねぎを注文して乾杯した。店の人は昼間から飲んでいる男二人を見て、少し呆れたような顔をしていた。

準備運動のつもりでチューハイを一口飲んだ友達が「うわっ、これキツっ」と言い、顔をしかめた。そんなに酒に対して弱くないが、特に強くもないヤツである。僕もどれどれと一口飲んで、確かに昼の一杯めにしてはきつ過ぎるなと思った。

結局、その友達はスタートから飛ばし過ぎたこともあり、ずいぶんと早くリタイアしてしまった。そして僕は残りの時間を、一人寂しく飲み歩いたのである。

「何だか楽しそうなことやってんな。どこ巡ったの?」

「わびすけの次は、今出川室町にある<おもの里>で酒と馬刺。その後地下鉄で丸太町に行って、夷川にある<グリル・デミ>でハンバーグをつまみにワインとか飲んで。少し休憩して、裏寺町にある<たつみ>に行ったんすけど、3時なのに混んでたんですよ。だから木屋町四条まで歩いてONZE11っていう店で飲んで、そこで友達は眠くなってリタイアです。そっから一人で木屋町三条の<一休>でホルモン串をアテに焼酎飲んで、その後は蛸薬師の<福市>で焼酎と魚。店を出てふらふらと五条まで歩いてアジェって焼肉屋の向かいにあるKAOってシェリーバーで飲んでました。そこで打ち止めです。KAOでつい寝ちゃったんですけど、店員さんが知り合いなんで店閉めるまで寝させてくれたんですよ」

「7軒か。まあまあだな」
「そうですね。10軒行きたかったんですけどね」

一回そういうのを平日にやってみてーなぁ、とカクさんは呟いた。





  


Posted by Tamo at 23:52Comments(0)酒と肴

2009年08月04日

いもねぎ(その1)

先輩のカクさんに「お前んちで飲もう」と言われて、そういう運びとあいなった。
「俺が酒持ってくから、テキトーにつまみ作ってくれ」
てなわけで、テキトーに作ることにした。
材料が安くて、簡単にできて、ボリュームがあって、酒の肴的で、味も悪くないものって、なーんだ?

そんな問いかけから導かれる答えは、ジャガイモ、玉ネギ、ひき肉、卵なんかを使用するアテである。僕はずいぶん前に食べた、今出川にある<わびすけ>という定食屋の看板メニューである<いもねぎ>を、記憶を頼りに再現することにした。

スーパーで買い物をして帰り、ごそごそと支度をしていたら、カクさんが到着した。

「早かったっすね。いもねぎ作ろうかなって」
「いいね。いもねぎって、久々に聞いたわ。でかい玉ネギだな」
「淡路産です」
「淡路産かぁ・・・。淡路産は目にしみるんだよな・・・」
「いや、どこの玉ネギもそうですよ」
「淡路のは特にそうなんだよ」

別に自分で作るわけじゃないクセに、文句の多い人だ。
カクさんがビールとかを冷蔵庫に入れている間、僕は材料の野菜を薄めに切って、先にミンチが焼かれているフライパンに投入した。自分なりのちょっとした工夫として、カレーパウダーを使ってみることにする。これならビールにも焼酎にも合うだろう。

材料を卵でとじて、出来上がり。

「お待たせです」
寝転がってマンガを読んでいたカクさんは「うぉう」と獣のような声をあげて、料理を見た。


「いもねぎ?」
「いもねぎです」
「・・・・・・こんなんだっけ?]
「こんなんっすよ。カレーパウダーで味を少し変えてますけど」
「・・・・・・・・・・・・。まあいっか。飲むべ食うべ」

さっきの長い沈黙、なに?

「記憶を頼りに作ったんでよく分からないんですけど、こんなんだったと思いますよ?まあ、確かに不細工ですけどね」

「うん。俺も実際のいもねぎがどんなんだったか、よく思い出せないんだよなー。わびすけに行ったの、かなり前だしな。・・・・・・うん、味はイケる」



「カレー入れたら、たいていの食い物はうまくなりますよね」
「そういうもんだよな」
カクさんが玉ネギをつまみながら言う。
「なあ知ってたか。いもねぎってのは、元々晩酌のアテとして作られたらしい」
「そうなんですか?」
「さあ。俺も人から聞いたから本当かどうかは知らんけど、そういう噂」

カクさんの話には、こういう信じていいのかどうか分からない小ネタが多い。

「まあ、経済的な食いもんだよな。おかずにするもよし、酒の肴にするもよし。元々はこういうジャンクな形状だったんじゃねえか?」

しかし、飲みながら会話をしているうちに実際のいもねぎがどうだったかという議論になった。
「もっと丸かったっけ?」
「ですね。玉ネギとかの野菜も、こんなにたくさんは使ってなかったような・・・」
「ジャガイモはこんなに細くないよな」
「ええ。ジャガイモは火を通しやすくするために小さく切りました」
気になって気になってしょうがなくなった二人は、結局次の日にわびすけに行って、ホンモノを確認することにした。



  


Posted by Tamo at 18:12Comments(0)酒と肴

2009年08月03日

ゆるいラーメン屋台

四条某所で営業しているラーメン屋台がある。

火曜日から土曜日の深夜零時半頃に、白い軽トラがふらっとそこにやって来る。本当にふらっと。そして大将は駐車スペースを見つけていつの間にかそこにおさまると、車からおりて黙々と提灯とテーブルと椅子を出して商売の準備を整える。

名前はない。営業時間も実は決まっていない。商売っ気もあまりない。大将は夏と冬はひたすら長い休みを取る。どんなに遅く来ても、仕事をするのは4時まで。なるべく早くおうちに帰りたいらしい。

ある時、忘れられない会話を交わした。
立ち飲み居酒屋で一杯ひっかけて帰る途中、ラーメンが食べたくなった僕は、大将の携帯に電話をした。時刻は2時過ぎ。いつもなら余裕で営業している時間だった。

「はいっ、ラーメン屋です」

いつもこんな調子で出る。屋号がないのでラーメン屋と名乗るのだ。

「あ、すみません。今から行きたいんですけど、今日は何時まで?」

以前聞いた時は、一応の営業時間は朝の4時までだと言っていた。
しかし――。

「あぁ~、あのですね、今日はお客さんがあまりおらんもんですから、もう片付けて帰る所でした」

「そうなんですか?残念だなぁ」

「あのぉ、何でしたら待ってましょうか?」

一瞬、いい所あるじゃないって思った。

「ホントですか。ああ、でも、ご面倒でしたらいいですよ」

こういうのは、日本語の礼儀として言っておくものである。

「ああ・・・そうですか・・・。・・・・・・。ええと、じゃあ今日は閉めますわ」

え?
メンドーなの?

いや、でも「らしい」。らし過ぎるぞ大将。
フラれてしまった僕は、少し落ち込みながら三条のみよしに行った。嘘が人を傷つけることはよく知られているが、正直さもまた、人を傷つける時があることを知った夜だった。

大将はそんなカンジだ。一言でいえば、ゆるいキャラなのだ。
無愛想ではないが、表情豊かなタイプでもない。普通に客の話に合わせて相槌を打ち、普通に笑って、普通に気温の話をする。彼は寒いのがニガテだ。


一人でゆっくり作るので、あまり大勢で来られると実は困っているのが分かる。表情はあまり変わらないが、常連の目には明らかだ。彼が一杯のラーメンを作る時間は、そんなに早くない(でも最近は前より少し早くなった)。もう4~5年ほどやっているので、もう少し頑張ってほしいと思う反面、「いや、それでこそ大将だ。いつまでもそのままでいてくれ」とエールなんぞを送っている自分がいる。まったくフクザツな気分にしてくれる人だ。そんな屋台に、僕は大将のキャリアとほぼ同じ時間通い続けている。



ラーメンにはチャーシュー、ネギ、もやし、メンマ、そしてナルトが入っている。古き良き中華そばといった趣で、味はあっさりしている。不思議な味だ。以前スープに使っているものを聞いたら、野菜、昆布、豚骨、鶏ガラなど、色々なものを使っていると言っていた。僕は常連なのに、今だにこのラーメンを「~ラーメン」と一言で表せないでいる。豚骨ラーメンならもっと豚骨ラーメンらしく、鶏ガラ醤油ならもっと鶏ガラ醤油らしくすればいいのにって思う。

昔は一杯500円だった。ワンコインで食べることができたのだ。ところが今は600円である。チャーシューメンは700円から800円に値上げした。けど昔から、大盛りにしても料金は変わらないところが嬉しい。




僕はいつもチャーシューメンを食べている。「うりゃっ、これでもか」と主張するくらいにドンブリを覆う豚ちゃんたちを見て、客は喜んだり嘆いたりする。

「ええなぁ、大将。これくらいやらんとな」とか「あかんわオッチャン、これ多すぎるわ。もっと少のうせい」とか、色んな反応がある。はっきり言って後者のコメントには迷惑している。胃袋に自信がなけりゃ、普通のラーメンを頼めばいいのに。

でもそんな客が多かったのだろう。ある日、大将がこんなことを言い出した。

「チャーシュー、薄くしようと思うんです・・・お客さんから言われて・・・」

じゃあ、僕はどうなるんだ?って思った。僕は薄くしろだなんて思っていない。むしろもっと分厚くても大歓迎だ。たまにしか来ない上に自分の胃のキャパをしらない客か、昔からひいきにしている常連の僕か、どっちを取るんだ?と詰め寄りたかった。生まれて初めてそんな気持になった。

そんな僕の心中を察してか、「あの・・・薄い分多めに入れとくんで」と大将は言った。出て来たラーメンを見て僕は感動した。控えめに言って、豪華だった。デラックス・チャーシューメンと名づけた。薄いチャーシューは食べやすくて、おいしかった。<おいしい厚さ>は確かに存在するらしい。




でも、いつの間にかチャーシューは元の枚数になった。
薄くしたまま。
やってくれるじゃねえか大将・・・って思った。ゆるいキャラなのに、意外としたたかだ。

でも憎めない人である。それなりに気も遣ってサービスしてくれるし、おいしいものを作ってくれる。何よりもここのラーメンは、僕にとって京都の思い出の味なのだ。


  


Posted by Tamo at 23:20Comments(0)ラーメン